空き家問題に対処している国の現状
■実家対策と空き家問題は密接にある
昨今、世間でも「空き家問題」が語られるようになってきました。
問題になるのは、前回のコラムでもお伝えした、「放置された空き家」によるさまざまなデメリットです。
空き家もかつては誰かの自宅だったと考えれば、実家の問題と空き家問題を切り離すことはできません。
「実家対策=放置された空き家にしない対策」と考えてもいいくらいです。
まずは、国がどんな空き家対策をしているのか、簡単にお話しします。
空き家対策として国が行っているのは、大きく分けて「行政による特定空き家の認定」と「土地を国に返す制度(国庫帰属)の創設」の2つです。
ここでは土地を国に返す制度の創設について解説します。
■「国庫帰属」の実情を知ろう
令和5年(2023年)4月から、相続した土地を国に返す「国庫帰属」ができるようになりました。
これは、
「先祖代々引き継がれてきた土地があるけれども、地方なので誰も相続したがらない」
「山を相続したが、管理に困っている。売るメドも立たない」
といった場合に、土地を手放して国に返す制度です。
国庫帰属の申請ができるのは、対象の土地を相続で譲り受けた所有者です。
数人で共有することになった場合は、全員が共同で申請する必要があります。
とても便利そうに思える制度ですが、条件はかなり厳しくなっているうえに、費用もかかります。
国庫帰属が可能な条件には、「建物が建っていてはダメ」「担保が設定されていてはダメ」「境界線が曖昧なものはダメ」「崖があってはダメ」といったものがあります。
この条件で考えれば、実家の土地を国庫帰属させるためには家の解体が必須です。
解体してがれきを撤去するには、数百万円単位の費用がかかるでしょう。
また、相続で譲り受けた山林は、最近は活用の仕方も増えつつあるとはいえ、
「いらないからもらってほしい」
という場合も少なくありません。
でも、境界線が曖昧なことが多いと思われるので、ハードルは高くなりそうです。
なおかつ、承認を受けた場合には、10年分の管理費用を支払わなければいけません。
国庫帰属の制度は、この先どうなるのか読めない部分もありますし、期待したものの自分は利用できなかった、というケースも考えられます。
やはり、国庫帰属に頼らず対応するに越したことはないのかもしれません。
実家問題や空き家に関して取り組む際には、こういった現状も事前に知っておくことが大切なのです。