なぜ空き家になってしまうのか? 空き家問題が増えている現状
●「放置されている空き家」が増えている
現在は、空き家が増えている問題を耳にすることも多くなりました。
国の調査によれば、平成30年(2018年)の空き家は876万戸で、全体の約14%もあると発表されています。
また、空き家のうち、「売ろうとしている空き家」「貸そうとしている空き家」「別荘」に該当しないものも少なくありません。
つまり、「放置されている空き家」が約350万戸で、空き家全体の4割以上を占めています。
この比率は、調査のたびに上昇を続けているのです。
いわゆる「空き家問題」の根幹は、この「放置された空き家」にあるといえます。
では、どうして「放置された空き家」が生まれてしまうのでしょうか?
●制度や社会情勢の変化、都会と地方の格差が空き家問題を引き起こす
昔は、「家や実家は長男が継ぐもの」という考えが一般的でした。
法律も、そのように決まっていました。
でも現在は、法律も変わり、子どももそれぞれ独立して家を持っている時代です。
地元を出て別のところに住み、実家とまったく違う地域に拠点を構えるケースも多くなっています。
しかも、子どもの数も減っている現状…。
たとえば、ひとりっ子同士が夫婦になれば、それぞれの実家が余ってしまうという状況です。
このように、子どもが将来的に実家を引き継ぎ、住むことになるケースは少なくなっているといえるでしょう。
空き家が増える背景には、制度の変化や社会情勢の変化、都会の地方の格差といった、さまざまなことが考えられます。
わたしも地方出身なので、事情はよく知っているのですが、もう誰も住まなくなって、そのままで放置されている空き家は少なくありません。
しかも、その不動産を誰が持っているのかもわからない場合もあるのです。
●相続で手続きを怠ると、10人を超える共有物件も生まれる
「誰が不動産を持っているのかもわからない場合」というのは、登記簿謄本を見てもいまの所有者がわからなくなっているようなケースです。
「え? 登記簿謄本を見れば、所有者がわかるのでは?」
と思う人もいるかもしれませんが、わからないケースは非常に多いのです。
相続手続きがされておらず、すでに亡くなっている祖父の名義になっているような場合です。
たとえば、父親が亡くなって、すべての財産を洗い出そうとしたときに、父親の実家を調査したところ、実家の名義が故人である祖父になっていたとします。
父親は5人兄弟姉妹で、地元に残っているのはひとりだけ。
すでに、亡くなった人もいる状態です。
亡くなった兄弟姉妹に子どもがいれば、「代襲相続」といって、親の相続権を引き継ぎます。
さらに子どもが複数人いたとしたら、祖父の財産の相続人が、元の5人からどんどん増えていくことに…。
登記簿謄本の所有者を変えないまま、10人を超える相続人がその不動産を共有している状況になっているケースも少なくありません。
その状態を放置すれば、将来的には代襲相続人が亡くなって、その子どもが代襲相続人になり…と、どこまでも相続が広がってしまいます。
複数の相続人で不動産を共有している場合、もしその物件を売ろうと思っても、共有になっている人全員の合意を得て、印鑑を押してもらう必要があります。
親戚とはいえ、もともとお付き合いがなかったり、時間の経過で疎遠になったりすることもあります。
海外にいて、連絡をとりにくいケースもあるでしょう。
一番大変なのが、行方不明になっている場合です。
すでに亡くなっていると思われるのであれば、「認定死亡」という手続きをすることもできます。
ただ、認定されるまでに7年もかかるのです。
●「空き家」と「所有者がわからなくなっている物件」は、背景が同じこともある
登記簿謄本でいまの土地の所有者がわからないのは、相続が起きたときに名義を変える義務がなかったからです。
令和6年(2024年)の4月から法律が変わり、相続登記が義務化されました。
この背景には、増え続ける空き家をどうにかしたいという、国の思惑も含まれているのではないでしょうか。
「空き家」と「所有者がわからなくなっている物件」は、かならずしもイコールではありません。
でも、重なる部分は多いものと思われます。
放置されてしまう空き家を増やさないためには、事前に必要な対策を行っていくことがとても大切なのです。