親が施設に入ったら実家はどうする? 売る前に知っておきたい「定期借家」という選択
◼️親が施設入居で実家が空くときは、「定期借家」での賃貸を検討しよう
親御さんが施設に入ることになり、実家が空き家になる…。
そんなとき、賃貸として活用する方法を
考える方も多いのではないでしょうか。
今回は、実家を貸すときに知っておきたい
ポイントや注意点をお伝えしていきます。
まず注意しておきたいのは、
将来的にその家を売却する可能性がある場合です。
親御さんの入居費用をまかなうため、あるいは亡くなったあとに
相続人が売却を検討することもあるでしょう。
そのとき、家を賃貸に出していると「自宅用の物件」としてではなく、
投資用の物件として扱われるため、販売価格が下がる傾向があります。
このようなケースでは、
「定期借家契約」で貸し出す方法を検討しておくのが安心です。
なぜなら、通常の賃貸契約では
「自分で住みたいから」という理由だけで、
入居者に退去を求めることが難しいからです。
一方、定期借家の場合は契約期間を2年・3年などと定め、
満了時にあらかじめ通知をすれば、
スムーズに退去してもらうことができます。
このしくみは、転勤などで
一時的に自宅を貸す会社員の方がよく利用しています。
実際、入居者に退去をお願いするのは
精神的にも負担が大きいものです。
最初から定期借家にしておけば、
将来的な売却や再利用の際にも、
安心して手続きが進められるでしょう。
親御さんが施設に入居したタイミングで、
実家をどう扱うかの判断のひとつとして、
「定期借家契約」という選択肢を覚えておくと心強いですね。
◼️賃料の下がりやすさと、税制上の扱いに気をつけよう
定期借家にはメリットが多い一方で、
注意しておきたい点もあります。
まず、東京の一等地などを除くと、
一般的な賃貸よりも家賃相場がやや低くなる傾向があることです。
契約期間が限られているため、
入居希望者が見つかりにくく、
貸し手側が条件を下げざるを得ない場合が考えられます。
もうひとつ気をつけたいのは、
税制上の控除が使えなくなる可能性です。
一度でも賃貸に出してしまうと、
その家は「自宅」ではなく「賃貸用の資産」として扱われます。
そのため、相続後に売却して利益が出た場合でも、
通常であれば適用される「3000万円の特別控除」が
受けられないケースがあるのです。
このように、定期借家は柔軟に活用できる一方で、
賃料や税務上の扱いには一定のリスクが伴います。
とはいえ、親御さんが施設に入るなどの理由で、
・将来的に売却する可能性がある
・家族の誰かが住む可能性がある
・当面は賃貸として維持するかもしれない
といったように、
今後の方向性がまだ定まっていない場合には、
一時的な活用法として定期借家を選ぶのは
現実的な判断といえるでしょう。
将来の選択肢を残しつつ、
いまの時点で安心して家を活かすための手段として、
定期借家をうまく取り入れていきたいですね。

